9-9 IPアドレスとルーティング

ネットワーク層レベルでは、「論理的なアドレス」をもとにデータ(パケット)を中継し、エンドノード間の通信を行います。

IPパケットとIPアドレス

 ネットワーク層では、一つまたは複数のネットワークを介したエンドノード間でのデータ(パケットもしくはデータグラムとよぶ)のやり取りを実現します。
TCP/IPでは、このためにネットワーク層のアドレスであるIPアドレスを用います。

 IPアドレスは、TCP/IP中で、重複しないように設定する必要があります。MACアドレスと間違えやすいですが、混合しないようにしましょう。

IPアドレス:ネットワーク層で、最終的な送受信者(エンドノード)を指定する。
MACアドレス:データリンク層で、隣接ノード(中継ノードであるルータ)を指定する。

 IPは、宛先IPアドレスと送信元IPアドレスが設定されたIPヘッダーをデータに付加して、IPパケットを作ります。これをカプセル化といいます。
カプセル化されたIPパケットは、データリンク層に渡されます。
データリンク層(イーサネット)では、このIPパケットをひとまとまりのデータと見なして、宛先MACアドレスと送信元MACアドレスが設定されたヘッダを付加してフレームを作ります。

つまり、TCP/IPを用いたLANでは、フレーム中に宛先IPアドレスや送信元IPアドレスなどを設定したIパケットが含まれており、ルータなどはフレームからIPパケットを取り出すことによって、これらを知ることができます。

IPアドレスの体系は次のようになっています。

TCP/IPでは、IPアドレスが割り当てられた機器をホストと呼びます。
ホスト部は、組織内で自由に割り振ることができますが、ホスト部のビットすべて1のアドレスとすべて0のアドレスは予約されており、使用することができません

ホスト部の値がすべて0・・・組織のネットワークそのものをあらわすアドレス
ホスト部の値がすべて1・・・ネットワーク内のすべてのホストをあらわすアドレス (→ブロードキャスト参照)

ユニキャストとブロードキャスト

ユニキャストは、宛先を一つのホストに指定した送信
ブロードキャストは、ネットワークに存在するすべてのホストを宛先に指定した送信

ブロードキャストを行う場合は、宛先IPアドレスはすべて1となる特別なIPアドレスを指定します。

ルーティングの仕組み

TCP/IPでは、送信されたデータではルータによってネットワークからネットワークへ中継され宛先まで届きます。このような、次に中継すべきルータを選択して実際に転送する制御をルーティングといいます。
 ルーティングを実現するために、各ルータはネットワークアドレスと中継先のアドレス先の対応情報をルーティングテーブルという形式で保持しています。
 ルータは、パケットを受信すると、そのヘッダに設定されているIPアドレスに該当する行をルーティングテーブルから探し出し中継します。なければ中継をしません。

なおIPアドレスからMACアドレスを取得するためには、ARP(Adress Resolution Protocol)があります。

ルーティングテーブルに適切な経路情報を設定しておくことで、誤りのない効率的な通信が可能になります。ルーティングテーブルを維持する方法には次の二つがあります。

・タティックルーティング:ネットワーク管理者が手動で経路を設定
・ダイナミックルーティング:ルーター同士が情報を交換し、自動的に経路を決定

経路情報設定に用いるプロトコルのことをルーティングプロトコルといいます。
代表的なプロトコルに以下のようなものがあります。

RIP(Routing Information Protocol)は,各ルータが自ルータから到達できるネットワークとそのネットワークへのホップ数(メトリック)を通知し合い、最小となる経路情報を生成します。

OSPF (Open Shortest Path First) は、ネットワークの状況を各ルーターが把握し、帯域幅などの情報に基づいて最適な経路を計算、最適な経路を選択します。大規模ネットワークでよく利用され、ネットワーク構成の変更にも迅速に対応できるのが特徴です。