(Wide Aria Network)広域ネットワーク
WANの分類
WAN (広域ネットワーク) の通信方式による分類は、主に専用線方式と交換方式の2つに分けられます。交換方式はさらに回線交換方式とパケット交換方式に細分化されます。
1. 専用線方式:
- 特定の2地点間を直接結ぶ専用の通信回線を使用します。
- 回線帯域を占有できるため、安定した通信品質と高いセキュリティが特徴です。
- 音声通話やビデオ会議、基幹業務システムなど、信頼性が求められる用途に適しています。
2. 交換方式:
- 複数の利用者が回線を共有する方式です。
- 回線交換方式とパケット交換方式に分けられます。
- 回線交換方式:通信開始前に回線を確保し、通信終了まで占有します。PSTN (加入者電話網) やISDNなどが該当します。
- パケット交換方式:データをパケットと呼ばれる小片に分割し、それぞれのパケットを異なる経路で転送します。IP-VPNやインターネットVPNなどが該当します。
データ回線終端装置(DTE)
(Data Circuit terminating Equipment)とは、通信回線と末端の機器(端末やコンピュータなど)との間に設置され、機器から送られてきた信号を通信回線に適した信号に変換したり、その逆を行ったりして両者の仲立ちを行う装置。
モデム:デジタル信号を伝送路の特性に合わせたアナログ信号にデジタル変調して送信するとともに、伝送路からのアナログ信号をデジタル信号に復調して受信する。
光回線終端装置 (ONU):光通信ネットワークの終端に設置され、光信号・電気信号間の変換と光信号の多重・分離をする。
DSU(Digital Service Unit):ISDN回線に接続し、加入者線の終端・Iインターフェースへの変換・端末機器などへの給電を行う。
通信サービス
専用線:
- 拠点間を直接結ぶ、専用の通信回線です。
- 他の通信と混線しないため、セキュリティが高く、安定した通信が可能です。
- 高コストですが、高い信頼性が求められる場合に利用されます。
パケット交換:
- データをパケットと呼ばれる小さな単位に分割し、ネットワークを通じて送信する方式です。
- 複数の拠点で回線を共有するため、専用線よりもコストを抑えられます。
- 回線状況によっては、通信速度が不安定になる場合があります。
- IP-VPNや広域イーサネットは、パケット交換技術を利用したサービスです。
IP-VPN:
- インターネット回線を利用しますが、通信事業者の閉域網(専用のネットワーク)内で通信を行うため、高いセキュリティが確保されます。
- パケット交換方式で、柔軟なカスタマイズは難しいですが、比較的簡単に導入できます。
広域イーサネット:
- イーサネット (Ethernet) を利用して、地理的に離れた複数の拠点を接続するネットワークです。
- L2 (レイヤ2) でVPN接続するため、柔軟なカスタマイズが可能です。
- 設定が煩雑になる場合があります。
ブロードバンド通信:
- 高速なデータ通信サービスの総称です。
- ADSL、光回線(FTTH)、CATVなど、様々な種類があります。
- IP-VPNや広域イーサネットも、ブロードバンド通信の技術を利用しています。
モバイル通信
外出先からネットワークを利用するモバイル通信を行うためには、移動通信体を利用して行います。最近ではWiMAXと呼ばれる技術を活かしたモバイルルータやLTEに対応したスマートフォンを利用されています。また、スマートフォンをルータのや無線アクセスポイントのように利用してインターネットに接続するテザリング機能なども広く利用されています。
LTE (Long Term Evolution):
- LTEは、4G(第4世代移動通信システム)の技術の一つで、高速データ通信を可能にする技術です。
- LTEは、従来の3Gよりも高速で、より多くのデータを送受信できるようになりました。
- LTEは、現在でも広く普及しており、多くのスマートフォンやモバイルルーターで利用されています。
5G (5th Generation):
- 5Gは、LTEの後継となる次世代の移動通信システムです。
- 5Gは、LTEよりもさらに高速で、大容量のデータ通信が可能です。
- 5Gは、低遅延(通信の遅延が少ない)という特徴も持ち合わせており、リアルタイム性の高いアプリケーションやサービスに適しています。
- 5Gは、多数のデバイスを同時に接続できるため、IoT(モノのインターネット)の分野でも活用が期待されています。
LTEと5Gの違い:
特徴 | LTE | 5G |
---|---|---|
通信速度 | 高速 (最大数百Mbps) | 超高速 (最大数Gbps) |
遅延 | 比較的大きい | 低遅延 |
接続台数 | 比較的少ない | 多数同時接続可能 |
主な用途 | 一般的なモバイル通信、動画視聴など | 高速大容量通信、IoT、VR/ARなど |
モバイル通信技術
MIMO (Multiple Input Multiple Output) | 複数のアンテナを使って無線通信を行う技術で、通信速度や容量を向上させることができます。 |
キャリアアグリゲーション | 複数の異なる周波数帯の電波を束ねて、1つの通信回線としてデータの送受信を行う技術です。これにより、通信速度の向上や安定した高速通信を実現できます。 |
ハンドオーバー | 移動体通信において、端末が接続している基地局を別の基地局に切り替える動作のことです。これにより、移動中でも通話やデータ通信が途切れないように保たれます。 |
ローミング | 契約している通信事業者のサービスエリア外でも、他の事業者の設備を利用して音声通話やデータ通信などのサービスを利用できる仕組みです。 |
LPWA | 低消費電力で広範囲な通信を可能にする無線通信技術の総称です。IoT (Internet of Things) デバイスの接続に適しており、電池駆動で長期間稼働させながら、広いエリアをカバーできるのが特徴です。 |
IoTエリアネットワーク | IoTデバイスとゲートウェイ間のネットワークを指し、多様な通信技術を用いて、特定のエリア内で多数のデバイスが同時に通信することを可能にします。 |
テレマティス | テレコミュニケーション(通信)とインフォマティクス(情報科学)を組み合わせた造語で、自動車などの移動体に通信システムを搭載し、リアルタイムで情報サービスを提供する技術のことです。 |
エッジコンピューティング
エッジコンピューティングとは、データ処理をクラウド (中央サーバー) ではなく、データ発生源に近い場所 (エッジデバイスやその近くのサーバー) で行う分散コンピューティングの技術です。これにより、リアルタイム処理の高速化、通信コストの削減、ネットワーク遅延の軽減などが可能になります。
- 従来のクラウドコンピューティング:全てのデータをクラウドに集約し、そこで処理を行うため、データ転送の遅延や通信コストが発生しやすい。
- エッジコンピューティング:データ発生源の近くで処理を行うため、リアルタイム性が求められるアプリケーションや、データ量が多い場合に有効です。
- メリット:
- リアルタイム処理の高速化:データ処理がデバイスの近くで行われるため、クラウドへの転送時間を短縮し、より迅速な応答が可能です。
- 通信コストの削減:クラウドへのデータ転送量を削減できるため、通信コストを抑えることができます。
- ネットワーク遅延の軽減:ネットワークの混雑による遅延を軽減し、安定した通信環境を提供できます。
- セキュリティの向上:機密性の高いデータをクラウドに転送する必要がなくなり、セキュリティリスクを低減できます。
- デメリット:
- 分散処理の複雑化:複数のエッジデバイスで処理を分散するため、システム全体の管理が複雑になる可能性があります。
- エッジデバイスの処理能力:エッジデバイスの処理能力には限界があるため、高度な処理には不向きな場合があります。
WANのプロトコル
PPP(Point to Point Protocol)
PPPとは、電話回線を使ったダイヤルアップ接続でインターネットにアクセスしていた時代に用いられていた二拠点間を接続するためのプロトコルです。PPPは、データリンクの確立・開放・認証・アドレス割当てといった機能を持っています。
IPoE(IP over Ethernet)
IPoEとは、Internet Protocol(インターネット・プロトコル)の略で、インターネットで情報を送受信するための基本的なルールという意味です。このIPに則って、企業内のLANなどと同じ通信規格「イーサネット」(Ethernet)で、直接インターネットに接続する方式がIPoEです。
PPPoE(PPP over Ethernet)
PPPoEとは、電話回線を前提としたルールである「PPP(Point-to-Point Protocol)」をイーサネットへ応用した接続方式です。
インターネット通信技術の発達で、ADSLなどの高速インターネット回線が登場しましたが、ADSLを利用するときにはPCとADSLモデム間を、イーサネットで接続する必要がありました。つまり、イーサネット上でPPPの機能を使う必要が出てきたわけですが、これを解決するために作られたのがPPPoEという接続方式です。