5-10 バックアップ

フルバックアップ磁気ディスク上のすべてのファイルをバックアップする
差分バックアップ「直前のフルバックアップからの変更部分」をバックアップする
増分バックアップ「直前のバックアップからの変更部分」をバックアップする

例として、X、Y、Zの3種類のファイルが格納された磁気ディスク装置を想定し、次の3通りのバックアップ手法について検討してみましょう。いずれの手法においても、バックアップは毎日夜(業務終了後)に取得するものとします。図中の数値は、各データの内容を表すものとします。

  • 手法1(フルバックアップのみ)

日曜日〜土曜日の毎日、フルバックアップを行う

  • 手法2(フルバックアップ+差分バックアップ)

日曜日にフルバックアップを行い、月曜日〜土曜日は差分バックアップを行う。

  • 手法3(フルバックアップ+増分バックアップ)

日曜日にフルバックアップを行い、月曜日〜土曜日は増分バックアップを行う。

取得の時と同じ例を用いて、更に「水曜日に障害が発生し、火曜日の業務終了後の状態までデータを復旧する場合」を考えます。

この場合、手法1では、単純に「前日(火曜日)に取得したバックアップ」をそのまま読み込めばよいのに対し、手法2では

(1)まず、日曜日に取得したフルバックアップを読み込む

(2)次に、前日(火曜日)の差分バックアップを読み込む。

という2段階の手間が必要になります。手法3ではさらに手間が増え、

(1)まず、日曜日に取得したフルバックアップを読み込む。

(2)次に、月曜日の増分バックアップを読み込む。

(3)次に、火曜日の増分バックアップを読み込む。

というように、フルバックアップから前日までのすべてのバックアップを用いることになります。しかも、増分を読み込む順番を間違えてはいけません。このようにデータ復旧作業に要する手間(時間)は

フルバックアップのみ≦差分併用≦増分併用

のようになります。

ファイルのバックアップについては、次のようなことを留意するとよいでしょう。

  • 定期的にバックアップする

バックアップ計画に従い、日別や週別といったように、定期的にバックアップを行います。

  • データ本体とは別の媒体に記憶する

ファイルのバックアップは、元のデータが記録されている媒体(ハードディスクなど)とは別の媒体に取得(複製)します。同じ媒体にバックアップを置いたのでは、媒体が故障した時、元のデータとともにバックアップも失われてしまいます。

  • 複数世代を管理する

バックアップは直前の1世代だけでなく、「1日前のバックアップ」「2日前のバックアップ」などのように、その前のものも残してふくす世代を管理するのが望ましいでしょう。ウイルス感染や誤ったデータ更新などにより、直前のバックアップ時点よりも更に前の状態に戻したい、という状態も発生し得るからです。複数世代を管理する場合は、ファイル名には連番をつけるなどして、分かりやすくするとよいでしょう。

  • 時間帯を考慮する

バックアップ処理はシステムの負荷となり、スループットに影響を与えます。また、データ更新中にバックアップを取ると、整合性に影響が出ることもあります。できる限り、夜間などの、通常の業務時間帯と重ならない時間帯にバックアップを行うのがよいでしょう。

  • 遠隔地へのバックアップも考慮する

たとえ別媒体へバックアップしても、そのバックアップデータをバックアップ対象の装置と同じ場所においていくと、大規模な災害が発生した場合などに、すべてまとめて失われてしまう可能性があります。そのような事態に備え、(遠隔地などの)別の場所にバックアップを取得・保管しておくと効果的です。ベンダが提供しているリモートバックアップサービスを利用してもよいでしょう。